飲食店経営に乗り出そうと考えている人はたくさんいます。
しかし、思っている以上に飲食店経営は厳しく、難しい物なのです。
中には、「経営が難しいことは重々承知している」という人もいると思います。
しかし、経営をする以前にイメージをするのと、実際に経営してみて厳しさを痛感するのでは、その後の対応に大きく違いが出てきてしまいます。
そこでこの記事では、飲食店経営の厳しい状況を乗り越えて、軌道に乗せていくためのコツや方法について詳しく解説していきます。
この記事の著者
サシェ
関東在住の34歳
カフェ開業や経営についてのノウハウを発信しています。
飲食店経営はかなり厳しいビジネス
飲食店を経営したいと思う人のほとんどが
- 料理好き
- 食べ物好き
- 接客好き
自分が自信を持って作れるものを提供し、お金を頂くことができれば、これ以上の喜びはありません。
しかし、飲食店を経営するということは、当然従業員や設備、仕入れなどにお金を払う必要が出てきます。
そのため、目先だけのことを考えていると資金繰りや人手不足などに陥り、経営が立ち行かなくなってしまう可能性もあるのです。
つまり、どれだけ料理の腕を持っていても、どれだけ好条件の立地で店を構えたとしても、やり方が間違っていると失敗してしまう可能性が高いということなのです。
なぜ飲食店経営は厳しいと言われるのか?
飲食店以外のビジネスも、決して楽に儲けられるわけではありません。どの会社もそれなりの努力や苦労をしながら、生き抜いているのです。
その中でも、飲食店経営は特に厳しいビジネスだと言われています。
参考:カフェ開業に甘い夢はいらない!現実に向き合い、成功をつかむコツ
ではなぜそのように言われるのか、具体的な理由を見ていきましょう。
新型コロナウイルス
飲食業売上DIの推移(前年同期比)
新型コロナウイルスの感染拡大を背景に、緊急事態宣言が発令され、外出の自粛が求められました。 また、営業時間の短縮も行われました。
「生活衛生関係営業の景気動向等調査結果」によると、この影響は外食産業に直撃し、2020年の外食消費と外食売上は、2000年以降では史上最大の減少幅となりました。
また、酒類の提供制限で、飲食店は「顧客数の減少」と「客単価の低下」の二重苦となったのです。
ライバルの強さ
次にライバルの多さと強さです。
飲食店の中には、全国に名を轟かせている有名チェーンや大手企業があります。大手企業の場合は、労働力も資本力も個人店とは比べ物にならないくらいあります。
そのため、仕入れの量を極端に増やし、仕入れ価格を抑えることもできますし、チェーン店や大手企業のブランドイメージによって集客をすることも可能です。
小さい個人店と、有名チェーン店が隣り合わせになっていた場合は、人間の心理的に大きなお店や知っているお店に入りたいと考えるのが普通です。
このような事からみても、開業して間もない小さな飲食店というのは不利な状況に立たされてしまうわけです。
人手不足
飲食店経営が厳しいと言われている理由には、人手不足も大きく関係しています。
飲食店は、言い方を変えれば客商売ですので、接客が必要不可欠になります。
お客さんが帰らないとお店を閉めることはできませんし、お客さんが入っていない時でも気を使っていなければなりません。
そのため、結果的に長時間労働になってしまったり、肉体労働になってしまったりするため、飲食店での勤務希望者が中々現れないのです。
また、小さな個人店などの場合は、人件費についてもしっかりと考える必要があります。アルバイトであれば、混んでいる日にスポットで入ってもらうということもできますが、社員として雇用してしまうと、毎月固定費がかかってしまうのです。
このようなことから、人手不足を解消しながら、人件費を上手にやりくりするという、難易度の高い技術が求められるのです。
資金繰り
飲食店やカフェ開業する場合には、それなりの初期投資が必要となる場合があります。初期投資や仕入れ代、それから人件費や光熱費など、飲食業というのは他業種と比べると経費が大きいビジネスとなるのです。
これらを考えずに、最初から多額の資金を投入して開店準備をしてしまうと、開業した後に資金繰りが上手くいかなくなり、倒産してしまう可能性も大いに考えられるのです。
飲食店経営が厳しい理由
要因 | 影響 |
---|---|
新型コロナウイルス | 外出の自粛・酒類の提供制限 |
ライバルの強さ | 大手企業の労働力と資本力 |
人手不足 | 勤務希望者が少ない |
資金繰り | 他業種と比べると経費が大きい |
飲食店経営を成功させる方法
では、このような厳しさを乗り越え、飲食店経営を成功させるためには、一体どのようなことを意識していけばいいのでしょうか。
詳しく見ていきましょう。
意識すべき事 | 目的 |
---|---|
①目的を明確にする | 壁にぶつかった時に軸がブレない |
②事業計画をしっかりと練る | 想定外のことが起きた時に対応できる |
③慎重に物件を選ぶ | 立地や家賃などを吟味する |
④資金調達の知識をつける | 見落としがちな資金調達方法を知る |
⑤工事のタイミングと費用を考える | どのタイミングで・どの業者に |
⑥メニューにも手を抜かない | お客さんの目にしっかりと留まる |
⑦仕入れ業者を選別する | 信頼できる仕入れ業者を見極める |
⑧機材は新品か?中古か? | 新品と中古はどちらも一長一短 |
⑨来客率を高める設備を知る | キャッシュレス決済など |
⑩従業員を募集する | 飲食店は自分一人では回すことができない |
⑪広告費はケチらない | 広告宣伝費は投資 |
⑫開店までに綿密な準備をする | 初日にコケるとマイナスイメージが広がる |
⑬従業員を教育する | 安心して任せることができる |
⑭売上を上げるコツを知る | 現状維持ではピンチが訪れる |
目的を明確にする
飲食店を経営する場合に限らず、物事を始める場合には、ゴールから設定することが大事です。
飲食店の場合であれば、
- なぜ始めるのか?
- 短期で成長させて売却するのか?それとも地域に根付き長期的に経営できる店を作るのか?
- 味で勝負するのか?価格で勝負するのか?
ということなどを、細かく決めておくことをおすすめします。
そうすることで、トラブルが起こったり、壁にぶつかったりしても、軸がブレないため、立ち直れる可能性が高まるのです。
事業計画をしっかりと練る
そして事業計画をしっかりと練ることが大切になります。
中には、曖昧な計画やイメージで飲食店経営に乗り出してしまう人もいますが、これでは想定外のことが起きた時に対応することができません。
店のコンセプトや単価計算、回転率や稼働率の計算、席効率の計算など、全く知識のない人には若干難しく感じてしまうかもしれませんが、これをしっかりと行わないと資金不足に陥ってしまうことがあるのです。
物件選びは慎重に
飲食店経営を行う場合には、必ずと言っていいほど店舗が必要になります。
屋台や移動販売などの場合はそこまで心配する必要がないかもしれませんが、店舗を構えて営業をする場合には、立地や家賃などを吟味して選んでいくことが大切になるのです。
また、契約期間や坪単価なども把握しておく必要があり、尚且つ居ぬき物件なのかそうでないのかによっても必要資金が変わってきますので、しっかりと知識をつけておくことをおすすめします。
資金調達の知識をつける
飲食店だけでなく、経営者になる場合は資金調達の知識をつけることも大事です。多くの経営者は、
- 自分で資金を調達する
- 銀行から融資してもらう
- 投資家から投資してもらう
という資金調達方法については理解していることが多いのですが、
見落としがちな資金調達方法
- 補助金
- 助成金
の有無については把握していないことが多いです。
そのため、このような知識もつける必要があり、場合によっては専門家を雇うことも大事になってきます。
工事のタイミングと費用を考える
居ぬき物件を使う場合でも、完全な空き物件を使う場合でも、内装及び外装工事が必要になることがほとんどです。
しかし、どのタイミングでどの部分を工事するのかということを、資金などと相談しながら決めていくことも大事になります。
また、どのような業者に依頼をすれば安心できるのかということについても、事前に調査する必要があると言えるでしょう。
メニューにも手を抜かない
どの飲食店にも、おすすめメニューや目玉メニューが存在します。たかがメニューと手を抜かず、お客さんの目にしっかりと留まるように作り込む必要があります。
また、価格については、隣接する飲食店の価格帯を調べて決定することがおすすめです。
仕入れ業者を選別する
お店を開店すると、様々な仕入れ業者から営業マンが訪れるでしょう。
しかし、どれくらいの費用が掛かり、どれくらいの質の材料を卸してくれるのかということを、自分なりにしっかり精査して、信頼できる仕入れ業者を見極めることが大事になってきます。
機材は新品か?中古か?
飲食店を開業するためには、当然機材を準備する必要があります。
しかし、中古機材と新品機材では価格も変わってきますし、使える年数も変わってきます。ある程度使えそうな機材が残っている居抜き物件であれば、若干資金を節約することができる場合もあります。
しかし、そうでない場合には、新品を買うにしても中古を買うにしても、できるだけ安く状態の良い物を購入見極めて購入することが大事になってきます。
来客率を高める設備を知る
近年では、キャッシュレス決済が主流なりつつあります。
もっと言えば、現金での支払いにしか対応していないお店というのは、「時代遅れ」となってしまうのです。
また、店内BGMやWi-Fiなど、一見関係ないような設備でも集客に貢献してくれる場合があるため、店の雰囲気なども考えながら設置していくことをおすすめします。
従業員を募集する
飲食店は自分一人では到底回すことができません。そのため、従業員を積極的に募集することが大事です。
効率的に従業員を募集したい場合には、多少費用は掛かっても、求人サイトに掲載するなどの工夫を行う必要があるでしょう。
広告費はケチらない
広告宣伝費というのは、浪費ではありません。投資です。
特に開店して間もない飲食店というのは、近隣住民にしか認知されていないことがあります。
そのため、グルメサイトやホームページなどを活用し、多少の費用をかけても宣伝に力を入れることが大事になってくるのです。
開店までに綿密な準備を
開店日や開業日をある程度決めて、そこまでに120%の準備をしておくことが大切です。営業しながら改善していけばいいと考えている経営者もいますが、これは正直甘すぎます。
初日完璧な準備ができていないと、訪れたお客さんに満足してもらうことができず、マイナスの評判やイメージが広まってしまう可能性があるのです。
そのため、常にお客さんが入っていることをイメージしながら、準備を進めていくことをおすすめします。
従業員を教育する
従業員を採用したら、放置してはいけません。しっかりと店の雰囲気などにあわせて教育をしていく必要があるのです。
そのためには、ある程度マニュアルを作り、全ての従業員が同じような質で接客できるようにしておくことをおすすめします。
ある程度従業員の教育が行き渡れば、自分が店に立っていなくても、安心して任せることができます。
売上を上げるコツを知る
売上を上げるためには、気合と努力だけではダメです。仕組みを作ったり、繁盛店の仕組みを取り入れたりすることがとても大事になってきます。
つまり、飲食店経営というのは、現状維持をしているといずれピンチが訪れます。
調子のいい時こそ、次の戦略を考えて走り続けなければならないのです。
飲食店経営に必要な自覚
飲食店を経営・開業して自身のお店を持ちたい、自分が好きなことで生活していきたいというのは、とても素晴らしい目標です。
ただ、都会になればなるほど飲食店の倒産件数は年々増えていて、決して楽な職業ではありません。
これに対して、新規参入の件数も増えています。
飲食店経営は試行錯誤の毎日
つまり、入れ替わりが激しい業態だということです。お店を立ち上げ、経営を軌道に乗せるのは容易なことではありません。
集客しやすい駅前よりも、低コストで営業できる郊外店舗の方が良い場合もあるように、地域やジャンルによっても方法論が変わってきます。
絶対に成功する方法はなく、試行錯誤の毎日になります。
それでも店を盛り立てていきたい、自身が提供するメニューで人に満足してもらいたいという気持ちが、飲食店オーナーに絶対的に必要なものです。
お店を守って育てていくという気持ちが大切
絶対に景気が良い業態などは存在しません。独立してビジネスを起こす方が失敗するリスクと、会社で失敗して解雇されてしまうリスクは一見違うように感じるかもしれませんが、多くの社員を抱える企業であっても絶対に安泰なところなどはありません。
会社員だからといっても、一生安泰ということがない時代になっています。
もちろん考えなければいけないことはたくさんあります。どうやってお客さんを集めるか、変動する原料費をどう扱うか、アルバイトの雇用や教育、新メニュー、キャンペーンなど、さまざまなことを考えることが必要です。
それでいて、毎日決まった時間に営業することが求められます。それでも自身のお店を守って育てていくという気持ちがあれば、乗り越えられるはずです。
簡単に成功する魔法はありませんが、意志の力で乗り越えられる局面がたくさんある仕事であることは間違いありません。
お店のコンセプトを固める
飲食店は古来から続く業態で、人の生活に密接した業態です。生きている以上、飲食は一生続けることが必要な行為ですし、だからこそ毎回、毎日、同じものばかり食べることはありません。
必要な行為だからこそ楽しみたいと考えるのが人ですし、その時に食べたいものを選びたいものです。
だからといって、何でも提供できる飲食店にはあまり人は寄り付きません。
ラーメンであればラーメン、カレーであればカレーと、それぞれの専門店を探します。どのようなものでも提供している店舗は、あまり好まれないのです。
だからこそ飲食店経営を考える際には、何に特化した店舗を作るかということから考える必要があります。ラーメンとだけ区切ってもいけません。
豚骨なら豚骨、家系ラーメンなら家系ラーメンという、利用する方が何の店なのかをすぐに理解することができるように設定する必要があります。
さらに素材や調理法にこだわり、ネーミングや看板から味が想像できるコンセプト、あるいは期待を寄せることができるようなものでなければ、開店初動からつまづくことにも繋がります。
そして経営方針や料金システムを考える前に、まずは何屋をやるのかをしっかりと固めて、どのようなことがあってもブレないように徹底することが大切です。
ダメになってしまう店舗の特徴として、営業を続けるうちにさまざまなものに手を出してしまい、何屋なのかわからなくなってしまうということが挙げられます。
自らカテゴライズすること、そしてその分野を徹底的に追及することが必要です。
なんとなく定めたコンセプトや、何にでも手を出してしまう節操のなさは、確実に経営を圧迫します。どの世界で戦うのかという覚悟をまずは決めることが飲食店経営のポイントです。
飲食店経営の長所
ここまで、飲食店経営の厳しい側面を紹介してきましたが、小売など他の業種と比べて様々な長所が存在するのも事実です。
そのため、飲食店経営というのは、経営するにあたって比較的おすすめできる方法と言えます。
最大の長所は、利益率が大きく価格競争になりにくいメリットが飲食店経営にはあり、大型店が有利とは言えないということです。
みなさんも飲み会の店選びで、全国チェーンの店ではなく、地元の店を選んだという経験があると思います。
また、飲食店経営は、差別化しやすく、固定客をつくりやすい側面があり、万引きなどの心配もありません。
商品の自由度が高いのが飲食店経営の良いところで、粗利益率が大きいので、経営効率は非常に高い商売だと言えます。
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